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医療に関する県民との懇談会
〜介護保険・医療保険同時改正のポイントと
今後の市民生活への影響〜

玉井修

理事 玉井 修

会場風景

会場風景

日時:平成18年8月24日(木)19:00〜
場所:沖縄ハーバービューホテル(金鶏の間)

今回は介護保険に関する諸問題と題して、療 養病床削減を含み、今後、介護保険がどのよう に変わっていくのかを討議致しました。

まず、宮城信雄会長から『地域に根ざした活 力ある医師会』を目指して医師会を運営してい きますので、県民の皆さんの忌憚のない意見を お聞かせ下さいとのご挨拶がありました。

引き続き、小渡敬副会長より今回の介護保 険・医療保険同時改正のポイントと今後の市民 生活への影響と題してレクチャーがありまし た。超高齢化社会を迎えて、社会構造の劇的な 変化に伴い、医療や介護サービスのあり方が大 きく変化しようとしています。小渡先生の説明 により、現実は一つであるはずなのに、行政側 の解釈と、日医側の解釈が全く違う事が良くわ かります。財政の悪化を必要以上に悪く解釈 し、より医療や介護にかかる財源を圧縮しよう という意図が行政側にあり、危機感をあおって 医療や介護にかかるサービスを圧縮しようとし ている事は社会不安をあおり、社会全体に漠然 とした不安感を拡大させてしまいます。特に介 護保険に株式会社を参入させて介護保険の財源 を食いつぶした教訓を何ら総括せずに、今度は 医療に株式会社を参入させようとする愚行を繰り返そうとしている事に危機感を感じます。小 渡先生は今回の改正を、革命とおっしゃってい ます。皆保険制度やフリーアクセスなどに代表 される日本の医療制度は、世界にも類をみない 優れた制度で世界で最も長寿な国、日本を支え ていることをもっと評価されても良いのではな いでしょうか?

療養病床は現在38万床ありますが、平成23 年度末までに15万床まで削減するとの事です。 実に6割の病床が削減されます。介護難民は発 生せずに老健施設やケアハウス、在宅医療へ円 滑に移動できるのでしょうか?

今回の討論には沖縄県老人クラブ連合会の山 田君子氏がご参加され、今回の介護保険制度改 正により介護度認定が軽くなり、施設を出なけ ればならないケースでも結局在宅で見る人もい ないため、次の介護施設に無理矢理押し込んで その場しのぎを繰り返す悲惨な状況がある事を ご報告頂きました。共働きの多い沖縄では受け 皿となる家に介護する余裕が無いという現状が 見えます。沖縄県社会福祉協議会の伊波委員か らは、老人クラブ等と協力し合って、この様な 介護に関わる様々な隙間の解消に協力していき たいとのお話がありました。沖縄いのちの電話 の国吉守氏からは、老人の自殺などが新聞紙上 を賑わしているが、実際老人から自殺に関して の相談の電話はほとんど無い。社会全体が家族 を中心とした暖かいものであって欲しいとのご 発言がありました。医療制度や介護保険制度な ど社会保障制度の目まぐるしい変化のなかで、 いつの間にか見失っていた家庭の温かさ。社会 保障制度の充分に発達していなかった時代で も、人はお互いに支え合いながら生きていたは ず。制度をどのように改めようとも、基本的に 大切なのは人の心であり、思いやりや慈しみの 心が無い限りどのような制度も、設備も、財源 も人を救うことは出来ないと感じた言葉でし た。マザーテレサの言葉を思い出します。『富 める者から貧しい者に分け与えるのではありま せん、貧しい者同士で分かち合うのです』

以下に当日の懇談内容を掲載しますので、ご 一読下さい。

懇談内容

開会

司会(玉井)皆様、こんばんは。沖縄県 医師会の県民との懇談会、第2回になります。 忙しい中、また大混雑の中、多くの委員の皆 様、そして県医師会関連の先生方、お越しくだ さいましてありがとうございます。

それでは、早速、沖縄県医師会長、宮城信雄 よりご挨拶を申し上げます。よろしくお願いし ます。

挨拶

○宮城会長

宮城会長

皆さん、こんばんは。私は、ただいまご紹介 がありましたように、4月から沖縄県の医師会 長を務めております、宮城といいます。

沖縄県医師会の稲冨会長、その前は比嘉会長 でしたけれども、比嘉会長は「開かれた医師 会」というのを目指して頑張っておりました し、この後を継いだ稲冨会長は「信頼される医 師会」ということで医師会を運営されて、もち ろん当然公開されないと信頼されないというこ とで、開かれた医師会の上に信頼される医師会ということが成り立つということです。

私は、その原点に戻りまして、開かれた医師 会、それから信頼される医師会というのを発展 させながら、医療の原点に戻って「地域に根ざ した活力ある医師会」というのを目指して、医 師会活動を運営していきたいというふうに考え ております。

特に今、沖縄の中で問題になっている離島問 題、あるいは僻地問題、それに対しても医師会 としては何らかの手を打つための提言をしてい きたいというふうに考えております。

それから、医療というのは、1つの医療機関 で完結するものではないということで、医療機 関が連携をしながら医療に取り組んでいかなけ ればいけないだろうということで、その地域の 中で完結するような医療を目指していきたい。 これは医療機関同士の連携ということが必要に なってきておりますので、県立病院、あるいは 大学病院、それから民間の医療機関等々がそれぞれの役割を果たしながら、その地域で完結さ れるような医療というのを目指して頑張ってい きたいというふうに考えております。

本日、懇談していただくのは、介護保険につ いてということです。今いろいろな問題が出て きております。この介護保険問題については、 これからもいろいろな問題が起こってくると思 います。後で小渡副会長が介護保険ということ で、特に療養病床の問題について説明をしてい ただきたいと思います。その説明を聞いて後 に、皆さんから率直なご意見をお伺いしていき たいと思います。

皆さんが日ごろ感じている医療に対する問題 点、あるいは不平・不満というのがあれば、そ れを率直に話をしていただきたいと思います。 それが医師会ひいては沖縄県民の医療の向上に つながると考えております。ぜひ忌憚のないご 意見をお伺いしたいと思います。

非常に簡単ではありますが、ご挨拶にかえた いと思います。よろしくお願いいたします。

○司会(玉井) ありがとうございました。

続きまして、早速、懇談に入らせていただき ます。

本日は、介護保険にかかわる諸問題を主体に 議論を進めてまいります。そのため、本日は本会 の小渡敬副会長と、平和病院のケアマネージャ ーの当銘則子さんにお越しいただいております。

では、早速ですが、小渡副会長、お話をお願 いいたします。

1)介護保険に係る諸問題(療養病床削減を含む)

副会長 小渡 敬

○小渡副会長

小渡副会長

皆さん、こんばんは。県医師会の副会長をして おります小渡です。

介護保険は3年に1回、介護報酬の改定が行 われます。それに対して医療保険は2年に1回 改定されます。そのため、ある時期になると同 時改定になりますが、たまたま今年が介護保険 と医療保険が同時に改正される年でした。おそ らく厚労省は、今回の改定に向けて改定案を 色々練っていたということが、結果として分か ってきました。

(スライド1)

(スライド1)

改定の背景には、わが国の人口構造の変化が 関係しています。スライド1)に示したように 1950年代の人口構造はピラミッド型で、要するに高齢者より若年者が大部分を占めており、い わゆる健全な人口構造をしていました。

(スライド2)

(スライド2)

それが2000年には、スライド2)に示したよ うに人口構造は胴長になり、要するに若年者が 少なくなってきており、高齢社会ないし超高齢 社会と言われた時期であります。

(スライド3)

(スライド3)

それがさらに2050年にはスライド3)に示す ように、人口構造は逆ピラミッド型になり、高 齢者に比べ若年者が少なくなり、労働人口の減 少が起こると予測されています。このような人 口構造の変化を見越した上で、国は様々な施策 を講じなければならないと考えられます。

(スライド4)

(スライド4)

65歳以上の高齢者だけを見ると、スライド4)に示したように、どんどん増加し、平成42 年には500万人以上になると予測されています。全国と沖縄県の高齢化率を見ると、沖縄 県は全国に比べ高齢化率は約10年くらい遅れていることが分かります。沖縄県は長寿県で ありますが、必ずしも高齢化率が高いわけではないということが分かります。

(スライド5)

(スライド5)

次に、これまでの高齢者医療施策をスライド 5)に示します。昭和48年に老人医療費無料化 がなされ、その後58年には老人保健法が施行さ れ、59年には特例許可老人病棟いわゆる老人病 院が導入されました。しかしこれが、介護費用 や社会的入院の問題等を引き起こし、大きな社 会問題になりました。そこで平成2年に高齢者 保健福祉推進十カ年戦略いわゆるゴールドプラ ンが策定されました。平成5年には医療法が改 正され、療養型病床群の創設がなされました。 平成12年には介護保険制度が施行されていま す。さらに平成13年には第4次医療法改正が行 われ、そこで現在ある一般病床と療養病床が創 設されました。そして今年の同時改正で療養病 床の23万床を転換することが決まり、これが 今、大きな話題になっています。

(スライド6)

(スライド6)

それでは、まず今回の介護保険の制度改正に ついて述べます。

(スライド7)

(スライド7)

スライド7)に、介護保険財源の現状を示しました。介護保険の財源はスタート時点の 2000年には3兆6,000億円程度を見込んでいましたが、それが年々1兆円程度増加したため、 介護保険制度施行の3年後の改定で介護報酬の抑制が図られ、その後は5000億〜6000億円 の介護費用の伸びを示しています。

65歳以上の1号保険者の保険料は、当初2,911円であったが、総費用の伸びに比例して保 険料も増加し、平成18年では4,300円に引き上げられています。沖縄県の1号保険者の保険 料は現在、5,000円弱であり、全国でもトップクラスの保険料が高い県になっています。こ れは、要介護の利用者が多いことと、介護保険の高齢者施設が多いことを意味していると 考えられます。

(スライド8)

(スライド8)

スライド8)は、厚労省が今回の介護保険制 度改正に向けて、施行5年間の状況を総括した ものです。1つは死亡の原因疾患と介護状態に なった原因疾患は異なることが分かってきまし た。次に軽度の要介護者が急増している、そし て、これらの要支援や要介護1等の軽度の高齢 者が介護費用の約50%近くを使用しているこ とが分かってきました。また、リハビリ等によ る介護予防の効果が上がっていないことも分か ってきました。それらの結果から今後は高齢者 の状態に応じた適切なアプローチが必要である と考えたようであります。今回の改正は、この 結果に基づいて介護認定の見直しや、介護予防 の創設が行われたと考えられます。

(スライド9)

(スライド9)

次に65歳以上の死亡原因と要介護状態になっ た原因をスライド9)に示しています。死亡原因 は皆さんご存知のように、1位がガンで、2位が 心疾患、3位が脳血管疾患です。次に要介護状 態になった1位は脳血管疾患で、要するに脳梗 塞や脳出血です。その次に多いのは衰弱です。 言い換えると引きこもり等で、動かないことに よる廃用性の障害です。第3位は転倒骨折で、 死亡原因とは随分異なることが分かりました。

(スライド10)

(スライド10)

そこで、介護予防の観点から強化すべき分野 をスライド10)に示しました。1つは、運動器の 機能向上です。これまでもリハビリ、リハビリ と言われてきましたが、今後は予防効果を高め るために、より有効な生活リハビリや筋トレ等 を取り入れていく必要があるといわれています。

次に栄養の改善は、これはどうしてかという と、全国の様々な高齢者施設等を調べると、施 設の中に栄養失調者がいるということが分かっ てきました。なぜ施設にいて栄養失調かという ことになるわけですが、実際には偏食や、食べないとか色々な理由があるわけです。在宅でも 同様なことが考えられることから、栄養の改善 を重点項目にあげたと考えられます。

それから、口腔機能の向上については、口の 中というのは大事なんです。口腔機能が悪いと どうしても栄養障害に陥りやすく、会話も少な くなり、引きこもりの原因にもなると考えられ ます。

さらに、認知症の予防、うつ対策、閉じこも り予防等、この部分を重点的に改善すべきだと いうような方向になってきました。

(スライド11)

(スライド11)

今回の介護保険制度改正をまとめると、スラ イド11)に示したように6項目になります。1つ目 の「予防重視型システムへの転換」とは、新予 防給付の創設と介護予防事業の創設です。次に 「新たなサービス体系の確立」というのは、こ れは地域包括支援センターなるものを創設し、 それを拠点に小単位の地域密着型のサービスを 行い、医療と介護を連携するということになっ ていますが、現状では、まだまだ上手く機能し ていないように思われます。

それから「施設給付の見直し」では、利用者 にとって、これが一番大きな問題です。施設に 入ると食費と居住費が自己負担になります。こ れはすでに昨年10月から実際に実施されていま す。普通の所得のある人は、約9万〜10万円を 支払わないと、現実的には入所できないという わけです。いわゆる自己負担の導入で、財源論 から出てきた発想だと思います。

「サービスの質の向上」は、情報開示の標準化とケアマネジメントの見直しでありますが、 これは利用者に施設の質が分かるようにインタ ーネットに掲示する等、各施設の情報開示を法 律で規定するものであります。

次に、「被保険者・受給者の範囲」について は、厚労省は財源を確保するために、受給範囲 も高齢者だけではなく、介護の必要な障害者に も適用させ、2号保険者の範囲を現在の40歳か ら20歳に引き下げ、医療保険と同じように保険 料を徴収したいと考えているようです。今回の 改正では、これを法制化することは見送られま した。しかし平成21年までに社会保障に関する 一体的な見直しを検討するとしています。

(スライド12)

(スライド12)

次に、医療制度改正について述べます。

(スライド13)

(スライド13)

医療制度改革の考え方は、すでに昨年(平成 17年)12月に政府与党が、スライド13)のよう に医療制度改革大綱に示していました。それは 3つの柱から成り、1)情報開示と疾病予防、2) 医療費適正化の総合的な推進、これは言い換えると、医療費抑制と自己負担の見直しであり、 さらに3)超高齢社会を展望し75歳以上の医療 保険制度の新設をするというものです。これら を踏まえて今年4月に医療保険制度の改革が行 われました。

(スライド14)

(スライド14)

その改革のポイントをスライド14)にまとめま した。今回の改正のポイントは非常に厳しい内 容ばかりです。改正の細かな部分は沢山ありま すが、県民の関心のある部分を抜き出すと、今 年の10月から、現役並みの所得のある70歳以 上の高齢者の自己負担を2割から3割に引き上 げることになりました。現役並みの所得とは、 夫婦2人世帯当たり年収が620万円以上ある人 のことで、これも2年後からは年収520万円以 上に引き下げることが決まっています。

それから、次に、今年10月から、医療療養病 床に入院する70歳以上の食費、居住費が自己 負担になります。ということは、介護施設では なくて病院にいても食費と居住費が自己負担と なります。これは大体9万円と言われています。 さらに2年後にはこれが65歳以上に引き下げら れます。入院した時に支払う高額療養費の自己 負担限度額も、これは現在7万2,300円ですが、 8万100円に引き上げられます。さらに平成20 年から70歳から75歳の自己負担を1割から2割 に引き上げると決まりました。

次に、今日の一番のテーマである療養病床の 再編についてです。現在、療養病床は、医療療 養病床(医療保険)が25万床、介護療養病床 (介護保険)13 万床、あわせて38 万床あります。これを平成23年度末までに15万床に削減 するという、非常に拙速というか乱暴な改革案 であります。これは、わが国の医療のあり方の 改革というより、医療革命に近いとも言われて います。何故なら充分な受け皿なしに、23万床 を急激に削減すれば病院が倒産するだけではな く、行き場を失った療養者が急増し、いわゆる 介護難民、医療難民が出てくるのではないか、 と新聞等で議論になっているわけです。

(スライド15)

(スライド15)

スライド15)は今述べたことを図式化したもの です。その中で、医療療養病床の入院について はこれまでとは異なり、患者を重症度や日常生 活の自立度から医療区分1〜区分3に分類して おります。そして入院患者が区分2以上でない と必要な診療報酬が得られず、病院の経営が困 難になるような仕組みに改正されました。

介護療養病床は、今後6年間に老健施設やケ アハウス等の介護保険施設に転換するとしてい ますが、全国の市町村長会は、これについて財 源上の理由で反対しており、今後どのようにな るか混乱が予想されています。

これらの改革を推し進めると、将来、高齢者 は在宅ないし介護施設で終末期を迎えることに なると考えられます。そして、現在はスライド 16)に示したように、約8割の人が病院や診療所 で亡くなっていますが(2003年)、1950年代の ように大部分の高齢者が在宅で看取られること になると考えられます。しかし実際には、スラ イドにも示したように、わが国は核家族化が進 んでいるため、夫婦のみの世帯と単独世帯をあ わせると約6割以上を占めていることから、自宅 での看取りは困難であると思われます。そこで 厚労省は、自宅の概念を、ケアハウスやグルー プホームを含めた介護施設等を自宅と広く捉え、 これを在宅と称しています。今後はおそらく、 グループホーム等の介護施設で終末期を迎える ことが考えられ、ターミ ナルケアについては、病 院ではなく、かかりつけ 医との連携が重視されて くるようになると思いま す。また、このことによ ってターミナルケアの経 費(診療報酬)を削減す ることが出来ると考えて いるようにも見えます。

(スライド16)

(スライド16)

(スライド17)

(スライド17)

今回の改正から、今後予測できることをスラ イド17)にまとめました。先ず、社会保障を将来 的に維持するために、今後全てを抑制する可能 性があります。医療・介護についてはさらに自 己負担が増える可能も否定できません。病院側 にとっては、医療報酬や介護報酬がさらに抑制 されることも考えられます。先ほど述べたよう に療養病床削減によりターミナルケアが在宅に 移行するものと思われます。医療への安心・信 頼を高める目的で情報開示がより進展すること が考えられます。さらに自己負担等が増加する 結果、国民の疾病予防の意識が高まることも考 えられます。以上であります。

これらの改革を急激に行い社会混乱を招かな いように、いかにソフトランニングするかが、 肝心のような気がします。ご静聴ありがとうご ざいました。

質疑応答

○司会(玉井) ありがとうございます。

ケアマネージャーの当銘さん。実際に今現場 ではどうですか。混乱とか起こっていますでし ょうか。そのあたりからちょっと聞かせていた だきたいんですけれども。

○平和病院 当銘ケアマネージャー

当銘ケアマネージャー

今年の4月から介護保険の改正が実際ありま して、まずは介護認定が変わって、要支援1、 要支援2というのが新しい認定結果が出てきま した。

その中で、その方々が、私たちも想定できな かったレベルの方が、今まで要介護1、要介護 2の方が要支援1・2になったという現状があり ました。それで、ご家族としましても、半身麻 痺があるのに、どうして要支援2になるのか。 そういうもので、実際混乱しているという現状 はありますね。

○司会(玉井) 介護度の評価そのものがか なり軽く見られているというか、そういう評価 が軽くなっているということなんでしょうか ね。委員の皆様から何かご質問がありました ら、いかがでしょうか。

○山田委員

山田委員

今、小渡先生のお話を聞いて、なるほどなということで、大体わかったような、難しいよう な。どうなるんだろうということで、ちょっと 不安があります。

実は、療養型だとか一般病棟でも、ある程度 よくなってもう治療の必要は、通院だとか、あ るいは大体必要がないから「お帰りなさい」と 言われても、先ほどもございましたように、地 域では核家族、老夫婦のみというのが急増して おります。そういう実態の中で「帰れ」といっ ても、別居している家族とか親戚の者は、在宅 で介護ができないから次の施設、老人ホームだ とか老健施設だとか、どこか受け入れてくれる 病院を血まなこで探してお願いして、10日でも 1週間でも入れてくださいということで入れる んですけど、入ったら最後。1カ月や2カ月、3 カ月ぐらいはもう何やかんやいって長期に入院 するというケースが、私の身辺にもたくさんあ ります。地域に住んでおりますと、よくそうい うことを聞くんです。家に帰ってきても誰もい ないのに、誰が世話するの。私も働いているか らということで、共稼ぎの方はとてもじゃない けど受け入れられないということで苦悩してい らっしゃいます。

地域の受け皿がないのに、帰さないといけな いというような実情があるわけですね。

また低所得の高齢者の方は、もうこれ以上払 えないから、いわゆる在宅費とか食費なんか上 がっていろいろな負担が出てくるから、どうし ても病院には長くいることができない。家に帰 りたい。やっぱり住み慣れたところに帰りたい ということで、帰りたい要望。面会に行きます と、「帰りたいよ、連れて帰って。」というよう なことで、よく言われるんですよ。けれども、 介護力がないのに連れて帰ってもしょうがない から、「もうちょっとよくなって、帰ってきた らまたみんなでいろいろとお話し合いしましょ うね。」というぐらいでごまかして帰ってくる んですけれども、患者自身は地域に帰りたい。 それに、また家族は、積極的に世話するところ がないということで嫌がるわけですね。

私たちも老人クラブとしましても、高齢者、同僚ですから、支えあって生きていこうという ことで、「友愛訪問制度」というのを全国で各 市町村、東北にしろ、あるいは関東、関西、四 国、九州あたりでも、本当にいろいろな集落、 いろいろな地域で友愛活動、友愛訪問、1人暮 らしとか寝たきりの人とか、ちょっとした介護 1・2ぐらいの程度の人は、お互いに声を掛け 合って支え合っていこう。

そして、軽いケア。服薬させたり、ちょっと 背中をさすったり、シップを張ったり、体位変 換させたり、車椅子に乗せて散歩したりという ような程度はどんどん今全国的に広がってやっ ているんですが、悲しいかな、沖縄県の場合は 施設志向が多いんです。少し具合が悪くなった ら、どこの病院に入れるかねとミーグルグルー (目をまわして)して家族が探して、入ったら最 後、もうソーシャルワーカーが退院を勧めたり、 次の施設を探してくださいと言っても逃げる一 方で、なるべくこの病院に長期に入院させてほ しいということで、しがみつくわけですよね。

社協だとか民生委員だとか、いろいろとかか わりを持ちたいということで声をかけるんです けれども、今度、合併問題が浮上しまして、地 域では、特に社協あたりなんかでは、もう予算 がないから自分たちのことをするのが精一杯 で、老人クラブの世話まで見ておられませんと いうことで、今まではミニデイサービスとか、 いろいろな地域におけるデイサービスは老人ク ラブとタイアップしてやっていたんですけど、 これも老人クラブで勝手にやりなさいというよ うな状況ですし、友愛訪問活動もやりましょう といって乗りかけたら、もう合併で予算がない から立ち消えになりましたし、民生委員さん は、民生委員さんの法規といいましょうか、条 例には、高齢者引きこもりの老人を定期的に訪 問してケアしてあげるというようなことがうた われているんですが、実際に民生委員に聞いて みると、1年に1回、盆と正月にメリケン粉と か、黒砂糖とか配達しながら声かけするだけ で、日常茶飯事はとてもじゃないけどやってな いということですよね。

社協のほうにちょっとかかって、これから老 人クラブと一緒に友愛活動をやりませんかと言 いましたら、財源がないのにそんなことまでや ってられないから、老人クラブは老人クラブで やりなさいと言うんですけど、老人クラブ単独 だけでは独走できないんです。行政か社協か、 どこかの後押しがいる。特に独居老人、孤独な 老人がおるところなんか情報も集めないといけ ませんし、1人でばーっと行ってもいろいろな 事故や事件が起きたらどう処理するか。やっぱ り連携してやってほしいというような願いがあ りますので、声かけしても、無論、地域の区長 さん、地域の民生委員は重荷になるというよう なことであまり乗り気にならないし、地域の行 政も社協もしかり、シャットアウトをどんどん やってきますし、行政の健康課と福祉課あたり でも、自分の手前のことで精一杯ですので、お そらく包括支援センターができても、この前、 包括支援センターのことについていろいろ質問 したんですけれども、立案とかパイプ役はする けれども、アクションを起こしたり、実際行動 したり地域に入って指導するというところまで はまだいってませんということで、なるほどね。 包括支援センターってできて間がないから、今 ちょうど過渡期かなと思って私はそれで納得し たんですけどね。どうもそこらへんも看護師や ら運動士やら、あるいは保健師なんかも少ない ようで、なかなか地域に密着した、各単位クラ ブに密着したような、こういうような友愛活動 なんかも指導してくれそうにもありませんので。

近くの診療所の先生方も、この程度だったら 入院せんでも家で養生しなさい。近くのお友達 と一緒になって、いろいろ世話してもらいなが ら生活できますよと言われても、不安だから、 さびしいからということで、診療所の先生にし がみついて、どこかに入院させてくださいとか いう事例もあるんですよね。

だから、私たちは地域の先生方を中心に、社 協だとか、行政だとか、老人クラブも一緒にな って、元気な年寄りは80%おりますので、そう いう高齢者は、自分たちの踊りや歌やらサークル活動ばかりに熱狂しないで、そういうふうな 社会奉仕とか、地域を見守っていく。明日は我 が身というような感覚で取り組もうとしている んですけれども、なかなか進まないので、これ は医師会の先生方も何かいい知恵があったら教 えていただきたい。とにかく老人クラブは、行 政の後押しがほしいんです。

○司会(玉井) わかりました。

小渡先生、地域でどう受け皿を展開すべき か、または、どう地域が支えるべきか。ボラン ティアも含めまして、そういうこれからの見通 しありますでしょうか。

○小渡副会長  今、山田さんがおっしゃるよ うに、少し空回りしているところも沢山あると 思います。やはり基本は、市町村の老人保健福 祉課が中核になると思います。何故かという と、老人福祉事業は市町村では予算化されてい ます。今後それが強化されていくと思います。 本来、要支援というのは、介護保険の枠外であ ると思います。しかし5年やって見ると介護保 険料の約半分が、要支援や要介護1と要介護2 が使ってしまうとは国は予測していなかったの ではないかと思います。そこで今回の介護保険 制度改革で、もう一度やり直したら、昨日まで サービスを受けていた人たちが、今日からはサ ービスは受けられませんとはできないので、こ れを介護予防という形でサービスしたようにも 思います。今後は次の段階でおそらく市町村の 老人保健事業として介護予防をどんどん推し進 めていくという形になっていくと思います。

○山田委員 これから老人福祉課とタイアッ プするようにお尻たたきに行きます。なかなか そっぽ向いて、年寄りは勝手にやりなさいと。

○小渡副会長 うるま市は、結構、老人保険 課が一生懸命やっているんですよね。

○当銘ケアマネージャー そうですね。うる ま市も合併して、山田さんがおっしゃったような 合併後の問題というのは、同じように出てきてい ます。

ただ、合併する前の具志川市。基盤が具志川 市だったんですけれども、その中で各公民館を拠点とした地域でみんなを見守りたいという、 自分たちで自分たちの地区を見守っていこうと いう活動が起きたんですよ。これは社協にあっ た、今はもう改正でなくなったんですけれど も、基幹型支援センターが中心となって、地域 のネットワークづくりに力を入れたんですね。 その中で、民生委員、それから警察、それと自 治会長、老人クラブの方とか、それから在宅介 護支援センターの方も一緒になって、そういう 方々がひとり暮らしの方を見守ったりとか、認 知症のある方の安否確認をしたりとか、そうい う活動が起こったんですよ。

これは、合併になって財源がどうとかいうも ので、ちょっと先ぼそりになっている部分もあ るんですが、地区の力をつけてきたところとい うのは、今でも同じ活動を続けているんですよ。

サービスの隙間を埋めるというのを、私たち ケアマネ現場としてもとても課題になっている んですよ。ご家族の方がいらっしゃっても、仕 事でいないんですね。デイサービス、デイケア から帰ってきても、夕方6時までの間、誰もい ないんですよ。その間どうするのというので、 私たちも非常にあの手この手考えながら、民生 委員さんに相談に行ったり、近所の方に「ちょ っと声かけお願いできませんか」と言ったりし ているんですが、現実はなかなかできない。や っているところも確かにあるんですけれども、 できないところが多いんですね。

そういうふうに介護保険だけではなくて、そ れから老人福祉のサービスだけではなくて、地 域に住んでいる住民の方々が自分たちのことと して考えて、一緒に支えていくことができれ ば、もっと介護保険で削減された部分とか、そ ういうものもみんなで支えあっていけるのかな というふうには考えているんですけれども、な かなか現実にはまだ働きかけている段階という のはあるんですが、みんなで一緒にやっていき たいことだなとは思っております。頑張ってい きましょう。

○伊波委員

伊波委員

私、社協の伊波です。宜野湾市のケースなん ですけれども、7月に「介護お助けマン」という形で介護のメンバーが、うちの介護支援セン ターで講習とかやっています。そこを受講なさ った方たちが、今モデル地区で3地域なんです けれども、「介護お助けマン」という形の助っ 人の制度をつくっています。2人1組で、介護 の訪問をしまして相談に乗ったりとか、できる ことをやるというふうに始まってますし、直接 的な福祉のサービスというのはもう地域でやっ て、市町村がやるという形で。障害者にして も、児童にしても、老人福祉にしても、福祉関 係は市町村が基盤だという位置づけはもう法体 系的にできてきましたので、それを市町村がど ういうふうに取り組むかというのが今後の課題 ではあるんですけど、先ほど小渡先生先がおっ しゃいましたけど、3年先には介護保険に障害 者の部分も、介護が必要な部分は全部統合され ていくと思います。

○司会(玉井) ここで意見交換ができてよ かったですね。

○照屋(医師会)

照屋(医師会)

先日、とてもバイタリティー溢れる、すごい エネルギーを持った人が核となって、その地域 自体をひとつの病院と考えるという内容の新聞 記事を読ませてもらいました。

ひとつひとつの家々を病院の病室と考える と、その地域の診療所や公民館が、ナースステ イションであったり待合室であったりするわけ です。

そうすると、そこで医療を実践する先生や、 民生委員の方々・社協の方々が、相当なバイタ リティーを持って回診して住民を診ていかない と行けないわけです。

このひとつの地域という病院の中で、「孤独 死」などがないように、ケアマネージャーの 方々・行政の方々も、「ピンピンコロリ」と満 足な死を迎えることができる体制を作らなけれ ばならないということです。

「安楽死」や「尊厳死」ではなく、「満足死」 が重要な事で、家族の方ももちろんその事に関 わってもらわないといけません。

とても難しいこととは思いますが、相当エネ ルギーを持った人が、核としてその地域に必要 ということだと思います。

○司会(玉井) 国吉委員、今、老人の自殺 もあるかと思います。今、地域でしっかりやっ ていこうという話が出てきて、非常に明るい未 来が開けているような気もするんですけれど も、実際には老人の方々が自殺をしてみたりと いうような話もよく新聞に見ますけれども、 “いのちの電話”を主宰されていて、こういう 高齢者の方からのお電話とかご相談とかいうの もありますでしょうか。

○国吉委員

国吉委員

高齢者の方もあるんですけれども、やっぱり 少ないですね。ですから、むしろそういう方々 は、本当は訪問してわかるんじゃないかなとい う気がします。

今、照屋先生がおっしゃったように、地域が 病院の形になるというのは、ある意味では、私 も理想ではないかなと思うんです。

先ほど50年代では、80%が自宅で死亡した んですけれども、2000年になるともう80%が 病院と。私の知っている方で、お2人とも80歳 を過ぎて病院にいたんですけれども、奥さんは どうしても家で召されたいという感じで、大変 いい病院だったんでしょうね。奥さんを自宅に 帰して、それから庭を見ながら亡くなったんで すよ。家族もある意味で満足して、本人も満足 して召されて。

そして、ご主人がまだ病院にいたんです。そ のときに「奥さん亡くなったよ」と言ったら、 もう「ぜひ会いたい」と言うわけですよね。そ したら、この病院のお医者さんもついて、担架 に乗せたまま、そして亡くなった奥さんと手を 握って、それでまた病院に帰ったんですが、ま た同じ金曜日の1週間後に、そのご主人も召さ れたんですけどね。

いろいろな意味で私たちは家族とか家庭とい うのは、おろそかではないんですけれども、核 家族になり、時代の変化もあってなんですが、 やはり人間が生きる根底に家庭がありますし、 家庭がまた地域とのつながりで。

昔、沖縄はドアも閉めないぐらい信頼関係が あって、人と人との輪もつながりもあったわけ ですけれども、今の子供たちというのは、本当 言うとおじいちゃん、おばあちゃんの死という のは知らないんですね。見ないんです。昔は家 庭でやりましたからね。だから、そういう意味 で、50年の間に消えてしまった家族の輪なんで すけれども、それを本当に。

いい意味でもう一度家庭に戻して。今、先生 がおっしゃったように、これもいい面をとれ ば、本当に私たちはもっと家庭を中心に、地域 を中心にということで育てていかなければいけないんじゃないかと。

ですから、“いのちの電話”は、実際は訪問 も何もできないんですよ。本当に電話1本で心 と心の、もちろん高齢者の方もありますけれど も、そういう意味では、ある1つの働きはして いますけれども、老人クラブの方とか、あるい は社会福祉協議会、あるいは民生委員の方々 と、そういった連携をしていかなければいけな いと。

高齢者の自殺も増えてますし、昔は健康状態 のことが一番多かったと思うんですけれども、 今はやっぱり社会の情勢の変化で、生活あるい は経済的な面も出てきていますし、そういう意 味で、全部総合的に命ということを考えた場合 に、やはり小さい命から一生の命、それを1つ に考えて、本当に生まれてよかった、生きてよ かった、長生きしてよかったという社会をつく るためには、介護保険も、医療も、全部連携し て、もっと温かいというか、そういうのをつく るきっかけになればいいかなと思っているんで すけれどもね。ただ、国が、財政が厳しいから 切るというようなことではなくて、本当に必要 なところには出す。

そういったようなこともあって、これからの 社会の形成というものは、我々はこれだけだか ら、こっち側は医療だから、介護だからという のではなくて総合的に、人が生きるために全部 必要な施設であり、また行政ですから、そのへ んを考えていかないといけないことではないか なと思うんですね。

ですから、“いのちの電話”とは直接には結 ばないのかもしれませんけれども、でも、本当 に1人の人間の一生ということを考えると、介 護保険あるいはこうした老人、福祉のことも深 いかかわりがあると思う。

ちょっと質問ですけれども、この改正のとき に国は、日本医師会でしょうか、お医者さんの 意見をどれぐらい聞いているのか。ほとんど聞 かないでなされているのか。お医者さんの方々 がおおむね反対をしていると思うんだけれど も、それがばさばさっとやられていくというのには…、日本医師会は相当強いと思うんですけ れども、どれぐらい聞かれているのかという。 ちょっとした質問もあります。どうもありがと うございます。

○司会(玉井) このへんに関しては、宮城 会長のほうからお話いただきたいと思います。

○宮城会長 小渡先生が医療法改正のところ で話がありましたように、去年の12月の大綱の ときには方向性というのは出してはいるんです ね。ただ、療養病床のほうで介護療養を廃止す るという話は全くないんですよ。

逆に、厚生労働省の中でも、むしろそれを療 養病床はすべて介護保険で面倒みようという意 見もあった。意見もあって、そういう話で進ん でいったわけですね。それとか、あるいは老健 施設は逆に医療保険でみようと。ちょうど38万 床とか20万床とかいうのがありますから、老人 保健施設は医療保険、療養病床は介護保険でみ ようと。コンバートしようというところまであ ったんです。ただ、療養病床の中の介護保険適 用の療養病床を廃止するというのは、突然出て きたような感じですね。ですから、反対する も、反対しないもなく、もう決まってしまった というようなことがあるんですね。

それから、介護保険の中で居住費、ホテルコ スト、それから食事費。それは去年の10月から 自己負担になってますね。それについても、医 師会は随分反対をしております。今度、医療保 険の中でもそれが導入されるということになっ ているんですが、それについても基本的に反対 なんですね。

介護保険と医療保険がどう違うかというと、 施設側というのは終の棲家ということで、家は なくてそこで居住を移しているわけです。しか し、入院というのは、家はあるんですよ。です から、家があって入院してますから、両方居住 費を払わないといけないんですね。もし入院し てて、居住費は自己負担になると。それは老人 ホームとかいうところと違うんですね。ですか ら、そういう意味では、居住費の自己負担とい うのはずっと反対はしてます。

それから食事というのは治療なんですよ。簡 単に言えば、例えば糖尿病なんていうのは治療 食といえますし、薬だけが治療ということでは なくて、食事というのも非常に重要な治療の一 環ですね。ですから、入院したから家でも食事 をとっているから、入院してもこれは自己負担 にすべきだという考え方は受け入れられないん ですね。ですから、それについても反対はして いるんですけれども、みんなお金の問題で自己 負担化にされるということですね。

ですから、問題点を指摘をして、これが自己 負担になるということが問題で反対だと言って も、強行に採決されていって決まっていってし まうということですね。ですから、何もせずに 黙っているということではなくて批判はしてお ります。

会場風景

会場風景

○司会(玉井) いろいろと折衝ごともあっ たようですけれども、最終的にはもう知らないと ころで決まってしまったということでしょうか。

小渡先生、先ほどから財源のことがいろいろ 出ておりますけれども、我々、医療費というの は使いすぎているのでしょうか。

○小渡副会長  医療政策は、基本的には国 民の医療を中心に考えなければなりません。し かし、同時に医療財源を無視して医療政策を作 ることも出来ません。最近はバブルの崩壊後、 長い期間不景気が続き、税収が減収し国の財源 が無いことに加え高齢社会となり、しかも急激 な高齢人口の増加があり、今後さらに高齢人口 が増加することから、医療財源が破綻しないよ うな医療政策が求められています。しかし、最 近の医療制度改革は財源中心と言わざるを得な いような状況にあると思います。

医師会は、今、会長が言われたように、色々 なことに対して反対をしています。ただ反対す るにも、反対する論理があるわけです。政策が 成功なのか失敗なのかは、何年か先に結果が出 たときに分かるような気がします。そのため、 これらの政策を決めるときは、その選択肢を徹 底的に分析する必要があると思います。日本医 師会には日医総研という研究所があります。そ こでの資料を基に述べたいと思います。

2)今回の医療制度改革は正しいか?

(スライド 資料−1)

これは国の一般会計・税収・歳出総額および 公債発行額の推移を示しています。国の歳出額 は概ね80兆円に対して税収は40数兆円しかあ りません。そのため毎年、国債いわゆる国の借 金を30兆円以上発行している状況にあります。 特に1997年までは国債発行高は20兆円弱でし たが、この時点で小渕政権は大減税を行い景気 回復を意図しました。しかし、実際には国民は 増えた収入を預金にまわしたため、予想に反し て内需が拡大せず、結果として税収が増えず、 その後から国債発行は30兆円を超えてしまいま した。その後の小泉政権は、国債発行高を30 兆円に抑制するという財政抑制策をとったた め、これが今回の年金や医療等の社会保障の抑 制に繋がらざるを得なかったように思います。

(スライド 資料−1)

(スライド 資料−1)

(スライド 資料−2)

次のスライドは国民医療費の将来推計を示し ています。厚労省の推計では医療費はどんどん増加し、このまま行くと平成25年には約69兆 円になると推測し、抑制すれば約44兆円程度 で済むとしています。これが医療費抑制の論拠 となっているようです。しかし、日医総研では この推計には疑義があると訴えていますが、な かなか取り上げてもらえないのが現状です。

(スライド 資料−2)

(スライド 資料−2)

(スライド 資料−3)

次に、国民医療費の推移を示しています。医 療費は年々徐々に増えていますが、対国民所得 で見ると、2001年から横ばい状態であり、必ず しも医療費の伸びが国民の生活に負担をかけて いるとは言い難いと思います。

(スライド 資料−3)

(スライド 資料−3)

(スライド 資料−4)

さらに、国民1人当たりの医療費の推移で見 ると、75歳以上の1人当たりの医療費は伸びて おらず、むしろ減少しています。これは個々の 高齢者が医療費を多く使っているわけではな く、要は高齢者人口が増えたために、高齢者の 医療費が伸びたことを意味しています。

(スライド 資料−4)

(スライド 資料−4)

(スライド 資料−5)

これは、よく言われているようにGDP(国 内総生産)に対する総医療費支出の国際比較で す。わが国はGDP比で見ると7.9%で先進国中 では18位で最も低いことが分かります。それに 反して世界で最も長寿の国であり医療・保健が 行き届いている国でもあります。このことから 安い医療費で効率の良い医療を行っていること が分かります。すなわち、わが国の医療は費用 対効果という面では非常に効率的になっている と言えます。このことを無視して厚労省が医療 の効率化というならば、それは効率化ではなく 単なる抑制という表現に変えるべきだと思いま す。

(スライド 資料−5)

(スライド 資料−5)

(スライド 資料−6)

最後に、国民負担率の国際比較を見てみたい と思います。国民負担率では、他の先進国に比 べて財政赤字対国民所得費はわが国がもっとも 高く、これは国の借金が多いことを意味してい ます。次に年金・医療・介護等の社会保障負担 率と租税いわゆる税金の負担率を合わせると、この負担率は通常50 %を超えないようにする方が良いと言われていますが、わが国は 35.9%であり、先進国でも負担率が低いことを示しています。もっとも低いのはアメリカ で32.6%です。これが低いのは、国民の大部分が保険に加入していないため、医療を受け られる人に格差が生じていることを意味します。わが国の医療制度を考える上では、この ようにアメリカ型にすれば自己負担をどんどん増やすことになり、医療を受ける側に格差 を生じることになります。そして、結果としてこの方向を推し進めれば国民皆保険制度が 崩壊する可能性があると思われます。

今後、もし医療財源が足りないというならば、皆保険制度を守る意味でも自己負担を増 やすのではなく、保険料を上げたり医療目的税を創設する必要があるように考えます。

(スライド 資料−6)

(スライド 資料−6)

質疑応答

○司会(玉井) ありがとうございます。と てもわかりやすい説明だったと思います。

委員の皆様、何かご質問ありますでしょうか。

伊波さん、どうぞ。

○伊波委員 反論ではないんですけれども、 本当に社会的入院が増えてしまって、どこの病 床も、特に県立病院なんかも、もう退院してほ しいのに帰らないというケースが多いみたいな んですね。そうしますと、本当に必要な人に医 療がいってないのではないかというふうに、ち ょっと見聞きされるんですけど、それはちょっ とお聞かせ願いたいと思います。

○小渡副会長 中にはやっぱり社会的入院が いないとは言えません。そういう人もいると思 います。ただ何もかも100%というのは世の中 にはないと思います。だから、そういう人が現 在医療を受けている人の半分以上だとか大部分 がそういう人であれば、これは何をしているん だと言われるのは当たり前だと思います。だけ ど、こういう人が一部にいて、それを例にとっ て、こればかりを言うのも問題がありますね。 さらに、もう1つ大事なのは、そういう制度に したことが問題だと思います。家に帰りたくな い、あるいは、家に帰りたくても家が受け入れ ないというのが問題なんです。そういう社会的 背景をまず変えようという考え方を持つべきで すね。

○伊波委員 友達同士の間なんですけれど も、例えば老人ホームといいますと、偉い人を 含めてですけど、かわいそう、冷たいとかいう ふうな言われ方をするんですね。病院という と、「まあ、大変ですね」と同情を受ける。そ れで病院のほうを選ぶとちょっと聞いたことが ありまして。それから、あとちょっと手術して ほしいのに、病床が空かないから何カ月待って くれとかいうふうなことを聞きますと、本当に 手術して早めに治ったほうがいい人が入れなく て、もう慢性的に入ってしまっている。そうい う部分がちょっと多いのではないかなというふ うな感じがしました。

○小渡副会長 わかります。それも、そうな ってはいけないような医療制度改革をしないと いけないと思います。今の医療制度改革は、急 性期医療でもなるべく早く治療して、在院日数 を短縮できない病院は、急性期治療として認め ないという。そういう医療制度なんです。それ が正しいかどうかの問題なんですね。病院とし ては、そういう施策に背いてやると運営が困難 になりますから、どうしてもその方向になるん です。それが全部間違えているとは言えないけ れども、その中で不都合な人たちがたくさん出 てくる可能性はありますね。だから、こういう施策を打った場合に、何年か先にこの施策が成 功か、失敗かということになるわけです。た だ、医療とか介護というのは財源がないからと か、それだけで済む問題ではないと思います。 回答にならないと思いますけど。

○司会(玉井) ありがとうございます。

もう時間も押してまいりました。最後の質問 とさせていただきたいと思うんですが、どなた かもう1つ。では、銘苅さん。

○銘苅委員

銘苅委員

まず質問からなのですが、今度の介護改正 で、介護予防の点が重視されているということ なんですけれども、実際に具体的にどういった ものをやるのか。まずそのへんから聞かせてい ただきたいと思います。

○当銘ケアマネージャー 介護保険でする介 護予防と、それと地域でする介護予防事業という のに大きく2つに分かれてくると思うんですね。

介護予防の中でも、介護保険の中では新予防 給付というものがこの介護予防の中にありまして、この運動器の機能向上、栄養改善、口腔機 能向上。この3つが行われているのが、介護保 険の介護予防の通所のデイサービス、デイケ ア、その中で行われています。

よく筋トレとかありますよね。機械を使った リハビリとか、足におもりをつけた筋力向上と か。そういうものとかも、この運動器の機能向 上。そういうのに含まれているんですね。栄養 改善のほうも、入院の方だけではなくて通所さ れている方、その方の中でも低栄養の方、そう いう方に対して栄養改善ということで取り組み がなされています。

あと、その下3つの認知症予防とか、うつ予 防、閉じこもり予防とか。これは市町村の介護 予防事業として取り組むものになってますね。 これは、取り組んでいるところと、取り組んで いないところと、多分、市町村によって別れて くると思います。

小渡副会長(左)、当銘ケアマネージャー(右)

小渡副会長(左)、当銘ケアマネージャー(右)

○銘苅委員 なぜこういう質問をしたかとい うと、実は私も今介護する立場にありまして、 母親がちょうど要介護2ぐらいでして、3年前か らそういう症状が出て、実は介護保険を受ける 前に、何とか筋トレとか、介護予防しようとい うことで、市役所とか幾つか相談したんですけ れども、そういうときは地域のデイサービスを 利用したらどうかとか、そういう話があったん です。そういうところに行っている間に、さら に症状が悪化して、結局、転倒して転んだ段階 で介護保険適用となったときに、トレーニング しましょうということになったんですよ。こち らとしては、そうならない前にいろいろ筋トレ など介護予防して老化を防ぎたいとか、そうい うことを考えたんですけれども、結局は介護保 険を受けて。そうなったときには、もうかなり 症状が進んでいて、転倒が始まってもう外に出 なくなって、今、家にいる形になってですね。

もし、そのときに何らかの形で。自己負担で もいいですから、筋トレができないかなという 話もしたんですが、それがなかなかうまくいか なかった例があってですね。もしそういう予防 事業を徹底するならば、結局、介護保険を受けないとデイケアに行けないという結果になって しまって、その事前にできないかなと思ったり もするのですが。

今考えると、デイサービスではなくてデイケ アが必要だったんですよ。さっきおっしゃった サービスの隙間だったんですよね。重症になる 前に何とかしたかったんだけど、制度上それが できないということになって、結局、介護保険 を受けた場合にはもうどんどん悪化した。今思 うと、そういう感じだったんですよね。

○当銘ケアマネージャー 今のようなものに 当てはまるかどうかなんですけれども、今回、 地域包括支援センターということで4月から新 しくできたんですけれども、その中の予防事業 の選定の仕方で、特定高齢者の施策というのが あるんですね。その特定高齢者の施策も、この 虚弱の高齢者に対する介護予防なんですよ。な ので、この6つのものも特定高齢者を選定して、 その予防に努めていこうというものになってい ます。

特定高齢者の拾い上げの仕方が、地域の住民 検診がございますよね。住民検診の中からピッ クアップされて、その中をスクリーニングをか けて特定高齢者、リスクの高い高齢者というの を選定して介護予防の事業に参加してもらう。 そういうような取り組みが始まっておりますの で、今後は、そのように地域の住民検診からと か、地域の保健師さんたちからあがってきた虚 弱と言われてる特定高齢者ですね。その方たち がどんどんピックアップされてくるような仕組 みができつつあると思います。

○司会(玉井) 介護が後手後手にならない ように、先手先手にやっていけるともっともっ とよくなると思います。

最後の質問を盛根委員からお願いします。

○盛根委員

盛根委員

先ほどの説明で、我が国の社会保険費といい ますか、それがGDP比なのですが、これが先 進他国に比べてまだ低いというふうなお話があ ったんですが、もっとこれからお年寄りが増え て、社会保障費というのはどんどん増えていくと。そうなってくると、GDP比も違ってくる んじゃないかなということなんですが。

要するに、そのためには、まだ保険料は上げ られる余地があるんじゃないかというふうなお 話なのですが、そのあたりがまだしっくりこな いんですけれども、どのあたりが適正水準なの かというところもわからないんですけれども、 そこは上げて、そうすれば医療費は抑制しなく てもいいのではないかと。医療費抑制するとい うことは、こういうふうなところでいろいろひ ずみが出てきて困るんじゃないかと。そういう ふうな理解でよろしいですか。

○小渡副会長 GDPに対する総医療費は、 先ほど示したように日本は7.9%で先進国の 中でもっとも低いので、これをあげることは 国の予算の配分で可能だと考えられます。社 会保障の負担率と税金は、これを合わせて 50%以内にしなければならないと言われてい るようです。そういう意味では、わが国は安 い医療費で非常に高度な医療を行っていると 言えます。このことは医師会が言っているの ではなくて、WHOが日本の医療制度は良い と発表しています。それは間違いないと思い ます。

要は、医療費等については保険料を上げて 保険でやるか、保険料を上げずに自己負担で やるかという国民の選択だと思います。わが 国の医療は皆保険制度で成り立っているの で、社会主義的で、資本主義的ではないんで す。その考え方で行くと、医療財源が足りな ければ全体の保険料を上げなければなりません。しかし、消費税を上げるのと同じで保険 料を上げるのは難しいわけです。そこで今回 の医療制度改革は自己負担を上げる方向で決 まりました。しかしこの考え方を推し進める と、入院しても自己負担額が食費とかホテル コストで10万円ぐらいかかるという時代にな ってきたわけです。そうなると、保険料を払 っているのに自己負担が高くてそれが払えな いために医療にかかれないという状態になっ たら困るわけです。問題は制度の考え方とし て、全体の保険料でやるか、あるいは自己負 担でやるのかという考え方の違いではないで しょうか。

○宮城会長 医療制度と、それから介護保険 制度という、制度のほうをきちっと理解をされ たほうがいいと思いますね。

それと、社会保障というのは、医療保険とい うのも社会保障の一種ですよね。社会保障が充 実していって、50%を超えたら国の力が弱くな るということはあり得ないんですよ。国際競争 力が非常に強いと言われている国というのは、 社会保障にお金を使っているんですよ。日本以 上に使っているんですね。ドイツも、フランス も、出てましたよね。ですから、国際競争力の 強いところは社会保障も高いんです。日本は、 それが非常に低く抑えられているということで すね。

先進国で、日本の医療費は、データにも出て ましたように18位なんです。日本より医療費が 安いところは、イギリスだったんです。「鉄の 宰相」と言われるサッチャーが出てきて、医療 費を極端に抑制をしたんですね。そうすると、 どういうことが起こったかというと、がんの手 術でも何年待ちという状態になったんですよ。 骨折をしていてもすぐには診てもらえないとい う状態になって、手術が必要だったらみんな大 陸のほうで手術をするということがあったんで すね。ですから、医療というのは抑制したため に崩壊してしまったのです。

それで、ブレア首相は医療費を今度上げよう ということで、毎年医療費を上げていったわけですね。それで、ようやく日本よりGDPに占 める割合がちょっと上回ったんです。というこ とは、医療費を抑制して医療が崩壊をしてしま うと大変なことになるという。日本は、それに 近い医療費で今抑えられているということで す。ですから、非常に大きな目で見ていかなけ ればいけないというふうに思いますね。

それから、社会的要因とかいろいろなことが あったんですけれども、これデータで見ていか ないといけないですね。入院がいっぱいだから 手術ができないということではなくて、今の一 般病床の病床稼働率というのは9割ぐらいなん です。つまり、日本の国全体としては1割は空 いているんですよ。ですから、大きな目で見る と、必要な手術は受けられないという状態では ないんですね。個々の例を取っていったらいろ いろな問題はあるかもしれないんですけれど も、日本全体の今置かれている医療の状況はど うかといったら、こういうことは今のところは ないです。ですから、全体的にいえば、一般病 床は1割空いているんです。これが稼働率です からね。

そういう意味で、大きな目で見ていかないと いけない。日本の医療が世界と比べてどうなっ ているのか。それから、介護保険がどういう方 向に向かっているのかということですね。長い 目で見るとどういう方向にいくかというと、日 数で医療保険を制限しようということに方向性 としてきているんです。皆さんよく知っている のは、リハビリの制限ですよね。脳卒中でリハ ビリを起こしたら90日以内とか、あるいは運動 器疾患だったら150日までしか医療保険は使え ませんよというのは、これ今リハビリで導入さ れているんですけれども、将来的にはすべての 疾患で導入されてくる可能性があるんですよ。 つまり、医療保険は何日までは使えますけど、 その後はもう介護保険でやってくださいという 方向性。その方向性が1つリハビリで示された ということです。

ですから、1つ1つの改正というのは非常に慎 重に見ていかないといけないですね。今の日本の医療、介護保険の方向がどういう方向を向い ているのかというのを、ぜひ関心を持っていた だきたいと思います。見過ごしてしまうと大変 なことになってしまいますので。イギリスのよ うな形で、崩壊をしてしまった後に元に戻そう としても、これはもう非常に難しいということ が起こりますから。

医師会は、何もその目先のことだけ考えてい るわけではないんですよ。世の中、世界には例 がたくさんあるんですね。そういうのを何とか 阻止というか、そういう方向に行かずに、今行 われている日本の医療、いいところは守ってい こうということをみんなに訴えているというと ころです。ですから、そのへんのところはぜひ 理解をしていっていただきたいと思います。

○司会(玉井) 温かい社会でありたいと思 いますし、それを支える社会システムというも のが重要だと思います。

宮城会長、何か追加、発言ございますでしょ うか。

○宮城会長 ぜひ医療制度、保険制度には関 心を持っていただいて、我々のためになるよう な制度になるように見守っていってほしいと思 います。

医師会に対しても、いくらでもいろいろな意 見をぜひ述べていただきたいと思います。本日 は本当にありがとうございました。

閉会

○司会(玉井) これをもちまして、平成18 年度の第2回県民との懇談会を終了させていた だきたいと思います。

どうも皆様、お疲れ様でございました。

ありがとうございました。

注釈:話し言葉で議論されているものを、発 言者の内容趣旨を重んじながら、簡素 化してまとめさせていただきました。

広報委員会