沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 8月号

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編集後記

暑くなってきました。沖縄では梅雨の地雨に よる土砂災害、本土でも大雨、そして猛暑にな りそうです。クーラーの効いた部屋の中で仕事 をしていると、季節の移ろいを感じることが出 来ません。そんな私にとって楽しみは学会出張 です。本土では春はさくら、秋はもみじと四季 を感じ取れます。7月に乳癌学会に行って来ま した。金沢です。自分の発表はうっちゃんなげ て、古都の初夏あらず食を楽しんで来ました。 あるお寿司屋さんに入り、大将の職人芸に感動 しました。一枚のイカを二枚におろし、さらに もうひと包丁。鮮やかなメスさばきでイカの三 枚おろしの出来上がりです。職人技ってスマー トできれいですよね。「沖縄の特産ってなんで すか?」と聞かれ、「塩です」って答えました。 だってそのお寿司屋さん、寿司を塩で食べる店 なんです。帰沖して9種類の島マースを送って あげました。

さて、今回の医師会報も盛りだくさんの内容 です。

テーマが二つあったと思います。ひとつは 「沖縄のこころ」もうひとつは「出口の見えな い医療問題」です。

宮城会長の「慰霊の日によせて」を拝読しま した。無知な私は、沖縄陸軍病院の塔の存在を 知りませんでした。子どもの頃、父親に連れて 行かれた慰霊の日の参拝のことを思い出しまし た。照りつける太陽の暑さに1分間の黙祷も我 慢できずにうっすらと目を開くと、親父の頬を 伝わる涙が目に入ってきました。強かった親父 の何かしら見てはいけないものを見てしまった 気がしました。戦争は多くの人、たくさんの財 産を奪いましたが、敗戦から立ち直ってきた沖 縄の強さが、我々のDNAに植え込まれていま す。沖縄のスピリットを忘れてはいけません。

大城盛夫先生、大西弘道先生、叙勲おめでと うございます。結核医療と地域医療にご尽力を つくされた両先生に感服です。沖縄の医療をよ くしたいというお二人の闘魂と気迫は、素晴らしい沖縄の魂です。

福島県立病院の産婦人科医師逮捕の事件は、 医療人にとって大きなショックでした。うわべ だけのお手軽取材記事を読んだ(あるいは聞い た)国民は、「また医者が悪いことをした」とし か考えません。マスコミはこの問題の本質に真 剣に触れることはありません。県民との懇談会 の場をもっと多く持ち、情報をアウトプットす る必要があります。その一方で、国民が医療に 対して不信、不満、不安を持っているのも事実 です。1級建築士に新たに試験を受けてもらって 新1級建築士を認定する案や、教員の免許更新 制度の話も出てきています。国民の不信をかっ た結果です。医師免許の更新制度も耳にします が、我々は国民の信頼を勝ち得るべきでしょう。 大浦先生の「貧すれど鈍せず」では、QOMを 謳っています。大賛成です。医療問題は、第三 者の論弁や一方通行の極論だけでは出口が見え ません。医療人のみならず恩恵を受ける国民も 一緒になって論議する必要があります。

緑陰随筆にはたくさんの寄稿ありがとうござ います。全て興味深くまた楽しく読ませていた だきました。バイク、旅行、唄、釣りなど多趣 味な話題満載です。上手くストレスを発散す る、いや趣味のために働いているのかと思わせ る本格的な道楽です。「メディア漬けと子ども の危機」は私の琴線に触れました。特に小児科 の先生方は実感されるでしょうが、人任せにす る親がたくさんいます。そしてなんでも人のせ いです。子どもが病気になったのも、上手く育 たなかったのも他人のせいです。子どもは悪く ありません、罪はないのです。テレビを見せな い、大切です。連日連夜悲しいニュースばかり 報道されます。新聞しかりです。特にテレビは 嫌な情報をrefuse できません。わが家では新 聞の購読を止めました(といったらバカにされ ますが)。今度はテレビを捨てようかと考えて います。

広報委員 久高 学

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